対極なお話

夏休みになりましたので、今日は私のおすすめの本を二冊紹介したいと思います。

この二冊は、ブログの題名の通り、対極なお話です。

一つ目のお話は、おそらく日本人であれば、ほとんどの方が知っているであろう
「わらしべ長者」

わらを拾った貧しい男性が、物々交換を繰返し、最後は長者となり「めでたし。めでたし。」となる、あの有名なお話です。

これの対極となるお話が、こちら

対極なお話
しあわせハンス (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本) https://amzn.asia/d/9OUbdOB

「しあわせハンス」です。

私が、このお話を初めて読んだのは、息子が小学二年生だか三年生だかの時だったと思います。

市の図書館で借りてきたこのお話を、自分ではちっとも本を読まなかった息子に、読み聞かせしたのが最初でした。

息子に読み聞かせる前に、まずは自分で黙読してみたのですが、読み終わった時に衝撃を受けてしまい

「何この話…。誰がこんな話書いたの?」

となり、思わず表紙を見て作者名を確認したのを良く覚えています。

そしたら表紙に

「グリム」

と書いてありまして

「グリムか…。なるほど…。」

と、なんとなく納得し、そして、うなだれたのも覚えています。

グリム童話は、私が若い頃に
「本当は恐ろしいグリム童話」
なる本が出版されて、それと同時に、グリム童話って、絵本とかは内容が子供向けに優しく改変されているけれども、原作はちょっと怖いお話らしいという認識が、多くの人に広まったような気がするのですが、しあわせハンスは怖いお話ではありません。

ただ、なんというか

「子供向けの絵本なのにこれで良いのか…。」(読んだ直後はグリム童話とは知らなかったので、作者名を確認するまでは、こんな感想でした。)

と思わされるような作品だと思います。

内容は、本当に「わらしべ長者」の逆バージョンと言って良いと思います。

親方の所で、7年だか8年だか働いていたハンスは、故郷に帰ると言って親方の元を離れます。

その時に親方から金の塊を貰うのですが、ハンスが
「金塊重いな~」
みたいな事を考えながら歩いていると、馬に乗った(馬を引いただったかしら。手元に本が無いので、ちょっと違う事を書くかもしれません。)人が現れて、ハンスは金塊と馬を交換するんです。

で、その後も、どんな理由だったか忘れましたが(でもどの理由もあまり前向きな理由ではなかったと思います。)馬を牛に取り替えて、牛を豚に取り替えてと、段々取り替える物が、こう言っちゃなんですが、ランクダウンしていきます。(わらしべ長者はランクアップしていくお話ですので、それとは対極です。)

で、最後は砥石(包丁とかを研ぐ、あの石だったと思います)だかなんだかに交換して、その砥石さえも、井戸のふちに置いて休憩していたら、井戸の中に落ちちゃうんですよ。

それで、手ぶらになったハンスは

「あ~良かった!僕は幸せ!」

みたいな言葉を晴れ晴れとした笑顔で言って母親の待つ故郷に帰りましたとさ。めでたしめでたし。

そんな内容だったと思います。

読み終わった瞬間、私は

「は!?何これ!?本当にこれで終わり!?」

と声に出して言って、まだページがあるんじゃないかと、確認したのを覚えています。

でも本当にこれで終わりで…。

黙読が終わった後、私はちょっと悩みました。

「これ、息子に読み聞かせても大丈夫かなぁ?」

と。

ウチの息子は、なんていうか、お気楽な性質な子なので、こんなの読み聞かせたら、

「身軽が一番!」

とばかりに、努力をしなくなるんじゃないかと思ったのです。

でも、
「そうは言っても、本にそこまで影響されるタイプの子でもないか。」

と思い直し、読み聞かせてみました。

そしたら、それまで、どんな本を読んでも感想なんか一言も言わなかった息子が、初めて声に出して感想を言ったんですよ。

「ハンスはバカじゃないの。」

と。なので私は、

「そう…かな。でもお釈迦様とかは、煩悩が全部無くなったら悟りが開けるみたいなことも言ってるし、あながちバカではないのかも…。」

と言いますと

「煩悩って何?悟りって何?」

みたいな方向に話がそれてしまったので、この本の感想を掘り下げるみたいな事はしなかったんですけれども。

夏休みの宿題に読書感想文ってありますよね。(学校によっては、夏休み中に本だけ読んで、感想文は二学期になってから学校で書くなんて所もあるようですが。)

感想文が苦手なお子さんの中には、

「本を読んだけど、そもそも感想が何も思い浮かばない。」

という子も、結構いる気がします。

正直な所、私はそれでも良いと思っているんです。

だって私は、幼い息子に、それこそ何百冊と本を読み聞かせましたけれども、全ての本に、これと言った感想があったかというかと、そうではありません。

あったとしても、原稿用紙三枚分とかの感想なんて、そうそう思い付かないと思います。

だからまぁ、感想文というのは、思い付いた感想に対して、いかに話を広げて行くかみたいな事が大切になってくるわけですけれども。

でも、そもそも「感想が思い付いかない」ていうのもあると思うんです。

そういうお子さんにとっては「わらしべ長者」と「しあわせハンス」両方を読んで感想文を考えるというのは、悪く無い方法の一つかもしれないと思いました。

何も思い付かなかったとしても

「どっちが幸せだと思う?」

て聞いたら何か言うかもしれませんしね。

で、お子さんが何か言ってくれたら、ラッキー!と思って、

「どうして?」

と聞いてみて、答えた内容が読書感想文で良いような気がします。

だって、それがお子さんの本当の気持ちですからね。

因みに私は、子供の頃
「ハンスはバカじゃないの。」
と思ったとしても

「そんな事を書いたら学校の先生に変に思われちゃうかな。」

とか気にしちゃって、あんまり正直に読書感想文は書けない子供でした。

だから、実は私は読書感想文を書くのは嫌いだったんです。(読書感想文が苦手なお子さんの中には、私みたいなタイプもいるかもしれませんね。苦手な理由って色々ですね。)

そんな子供時代を送ったものですから、たとえ思った事が

「ハンスはバカじゃないの。」

だったとしても、正直に書いちゃって良いと私は思っています。

でも、小学生とか中学生くらいのお子さんにとっては、それはちょっと勇気のいる事だったりするんですよね。

悩ましいですよねぇ。読書感想文。

余談ですが、このブログを書くにあたり、高校生になった息子に、ハンスの粗筋を話して(小さい時に読み聞かせをした事など、全く覚えていませんでした)どんな反応をするのか見てみましたら

「何だその話!深いな!なんなら僕がその内容で感想文書いてみたいな。」

かなんか言ってましたね。(なので高学年とか中学生のお子さんは、思いの外、考察とかするかもしれません。)

ウチの息子は、中三の時の読書感想文は、DVDで見たドラマ「白い巨頭」の感想文を、本を読み終わっていないくせに(小説が家に全巻あるので少しは読んだようですが、ほとんど読み終わっていなかったと思います。)

「ドラマを何度も見たから内容分かってるし、白い巨頭大好きだから大丈夫~!」

などと言い

「何が大丈夫なのか。『読書』感想文だと言っているのに、ろくに読書をしないで書くってどういう了見なのか。少しは真面目にやりなさい。」

と言ったにも関わらず

「やだ。絶対白い巨頭にする。白い巨頭ならアッと言う間に書き終わるしな!」

などと言って、ルンルンしながら書き上げた、たわけ者ですが…。

こんな事なら去年、わらしべ長者と、しあわせハンスを読ませて「二つの話を読んで」みたいな題名で感想文を書かせておいたら良かったと今更後悔しております。


感想文の宿題って、中々大変だと思うのですが、あまり難しく考えず、思った事を正直に書いてしまって良いと思います。

何も思い付かなかったら、本当は

「頑張って最後まで読んだけど特別思う事はありませんでした。登場人物に深く共感出来るでもなく、これといって印象に残る場面があったわけでもなく。要するに今の私にとっては、つまらない本だったのだと思います。 」

とか書けちゃったら良いと思うんですが、それはさすがに怒られちゃう気がするので、感想が出るまで本を読むなり、どうにか感想を捻り出すなりし(あまり共感できなかったとしても、強いて言えば、どの登場人物となら自分は仲良くなれそうかを考え、仲良くなれそうな理由、または仲良くなれないと思うなら、それは何故なのかを考えるだけでも、何か感想が思い付くかもしれません。)頑張って欲しいと思います。

それでは、良い夏休みをお過ごしください。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。



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2022年07月24日 Posted bySakamoto at 11:08 │国語 読書

この記事へのコメント
「しあわせハンス」息子さんの仰る通り、深いですね!
私も嫌いじゃないです。
お金や物じゃない、違うところに幸せを見出だしているんですね。
さすがグリム。

嫌いじゃないと言いましたが、何故そう思うのか。それは私が、それこそ対極にいるから(笑)
私こそが煩悩の塊だからです(^^;
だからハンスに感動してしまいました。

読書感想文の「共感できませんでした。」は斬新ですね!
でも確かに「あり」だと思います。共感できない理由でだって書けますもんね。
うちの教室の子ども達にもアドバイスしてみたいと思います(^^)

いつも勉強になります。ありがとうございます(^^)
Posted by HIROKOHIROKO at 2022年07月25日 00:12
HIROKO様

コメントありがとうございます(^^)

まさか、私の書いたハンスの粗筋で感動する方がいらっしゃるとは…。

ただ、原作を読んだら少し印象が変わるかもしれません。

だって、交換する理由のほとんど全てが、
「そんな事で良いのか!?」
みたいな感じなんですもん。

交換するものをグレードダウンさせるにしても、もう少し悩むとか、ハンスなりの考えがあるとかなら良いと思うのですが、どの理由も

「交換するにしたって、もう少しちゃんと考えてから交換しなさいよ!そんな事じゃダメだ!」

とハンスの肩を揺さぶって、お説教したくなるような、ちゃらんぽらんな理由だったと思います。

だから最後は、ハンスは後悔しましたみたいな落ちになるのかと思っていたら

「ハンスは幸せになりました。めでたしめでたし。」

て終わり方だったので驚きました。

しかし、私が、ハンスに思わずお説教したくなるのは、ハンスと同じ、ちゃらんぽらんなDNAが流れているからかもしれないと先生のコメントを読んで気付きました。(なんせ、読書感想文をDVDを見て書く息子の母親ですから。)先生はハンスの要素が無い方なのでハンスに感動してしまうのかもしれませんねぇ。

そうそう。読書感想文は、私自身が、『走れメロス』の感想文を書けと言われて
「こんなん誰にも共感出来ないんですけど…。」
と頭を抱え、思ってもいない事をでっち上げて嫌な気持ちになった過去があるので(次のブログにでも書いてみようと思います)どんなネガティブな感想でも良いから思った事を正直に書いてしまって良いと思っています。

ただ本当にこれと言った感想が思い付かない本て、私にもありますからねぇ。そういう場合は本当に悩ましいと思いますねぇ。
Posted by SakamotoSakamoto at 2022年07月25日 11:07
私は、感想文は嫌いですし、
感想文はすごく苦手です。
しょうがないからあらすじを書いて提出しました。
ただ、高校3年の時の国語の教科担任は変な人だったので、
自由に「銀河鉄道の夜を読んで」という文を
感想とは乖離した随筆を書いて提出しました。
だけど、感想文では無くなっていたその随筆、
変な人の教科担任は良い評価をしてくださいました。
Posted by けむし at 2023年05月06日 05:39
けむし様

銀河鉄道の夜ですか。

これはまた情緒的な、感想文を書くには大変な題材でしたねぇ。

でも、だからこそ、けむしさんの書いた随筆を先生は誉めてくださったのかもしれません。

情緒的な文の感想文というのは、子供からすると、どうして良いか分からず、どうしても粗筋を書きがちになってしまのですが、そんな中で、粗筋ではない、自分の考えを書いてくれたけむしさんを先生は誉めたのだと思います。

ちなみに私は、宮沢賢治は、雨ニモマケズを学校の先生が朗読してくれて、どう思ったか生徒達に意見を求め挙手をさせたのですが

「アタイは宮沢賢治よりもカメハメハ大王の子供になりたいわ~。雨が降ったらお休みで風が吹いたら遅刻したい。」

などと、ろくでもない事を思い、こんな事は口が割けても言えないと、黙っているようは子供でした。

こんなんでも今は先生ですからねぇ。人生どうなるか分かりませんねぇ。
Posted by SakamotoSakamoto at 2023年05月06日 22:58